インタビュー1「センターはばたき」施設長
今、行われている施設外就労の取り組みについて、障害福祉サービス事業センターはばたきの施設長である植田康弘様に事業所の立場から、これまでの経緯や始まる前と今、そしてこれからの思いについて伺いました。
現在の施設外就労に至った経緯・きっかけを教えてください。
これまでは内職作業を「めのや」から受託し、センター内で行っていました。そして昨年の夏頃に担当者との話の中で「重量のあるパワーストーンを会社とセンター間で搬入、搬出するのはお互い大変ですね。会社内のどこかに空き部屋でもあれば、パワーストーンでなく人材を運んで会社内で作業ができて効率が良いかもしれませんね。」ということがありました。
それから数ヶ月してから、担当者から「以前に話のあった会社内の空き部屋の件で提案がある」と連絡があり、そこから施設外支援の流れが生まれました。
はばたきでは、これまでも色々な実習は行っていましたが、どうしても短期のために仕事を覚えきれない状態で終わってしまうということがあり、継続的に実習ができればということ、それから「めのや」様からの仕事をこれまで事業所で行っていたということで、ある程度慣れた作業を行うこともできるということなど、望ましい実習の条件でした。
施設外就労に臨むにあたって「①気をつけたこと」はどんなことですか。
障がい者の方は、やはり環境の変化ということに敏感なので、その点を心配していました。
今回のような会社の中で仕事をするというのは、事業所で仲間と仲良く作業するのとは違った環境ですので、利用者の方の緊張感だとか障害特性で会社の方に迷惑をかけるのではないかといった色々な面での期待と不安の入り混じった状況での取り組みとなりました。
その点については、事前に会社の中で作業を体験するという形を取らせていただき、ある程度慣れる期間を設けることで対応しました。
現在、施設外就労に取り組んでいる利用者は決まった4名の方ですが、この人選については、事業所内で行っている他の仕事の具合、めのや様の仕事の具合、本人のその仕事への関心度を考慮し、職員の間で話し合いをして決めました。また、4名というのは事業所の職員が就いて行く上で負担が大きくならず、且つ仕事をこなすのに必要な人数ということで決めました。
施設外就労に臨むにあたって「②期待したこと」はどんなことですか。
やはり少しでも利用者の工賃向上となることです。
実際行ってみたところ、「めのや」さんの好意もあり、事業所へ持ち帰り作業に対して仕上がり単価を倍額に設定していただけたので直ぐに効果として現れました。
施設外就労に臨むにあたって「③不安に思ったこと」はどんなことですか。
通所利用者の特性が理解されず、会社の職員に迷惑をかけることがあるのではないかという不安がありました。
このことは、「めのや」の担当者の方が事前に社員の方に利用者の様子等を伝えていただき、大きなトラブルに発展していません。
ただ、現在も利用者の方によっては、時々「めのや」の方がびっくりするような行動をすることがあり、その都度、センターはばたきの職員と「めのや」の担当者とで話し合いをして対応しています。
始めてみての感想をお聞かせください。
はじめは利用者の方も緊張してやっていましたが、次第に目の輝きが変わってきました。
やはり会社に行くということは、事業所の代表で行っているということ、それから会社の中での緊張感をもって仕事をしているということで、責任感をもって仕事をするようになったことの現われかなと思っています。
現在、月曜日から木曜日を「めのや」訪問しての作業としており、その会社での活動を利用者はとても楽しみにして出勤して来られます。会社では事業所以上の集中力もみられて、作業効率も良くなってきています。
また、「めのや」受託作業は引き続き事業所内でも行っていますので、会社へ利用者が出かけて作業をすることが事業所に残って作業する利用者へのあこがれに映り、“いつか自分もきちんと作業ができるようになって「めのや」の会社へ行きたい”という目標に繋がっています。
「はばたき」として、これからの夢や目標を教えてください。
この「めのや」訪問をしての作業が定着をして、利用者の就労スキルが向上し、結果として作業量が増えて工賃も上がるということを一番期待しています。
また、「めのや」様と話し合いをしながらになりますが、今後作業スキルが上がった中で一般就労につながるような方が出てきてくれればと思います。それが難しくても、この取り組みを通じて培われる就労スキルというものは、どこの職場に行っても活かせるものだと思います。そして「めのや」での仕事が事業所内で働いている方の目標になると、事業所にとっても、利用者にとってもよいことではないかと思っています。
さらに、こうしたシステムが他の企業でも拡大して行われて、企業と利用者のマッチングによって、一人でも多くの障がい者の方が一般就労へ繋がってければとてもうれしいです。
利用者が本当に楽しんで仕事に取り組んでいる時の目の輝きは、見ていてこちらも本当に支援のやりがいを感じますからね・・・!(^0^)
インタビュー2「センターはばたき」担当職員
日々、利用者の支援を行っている担当者の視点で、今回の施設外就労について現場の利用者の様子や具体的な対応など率直な思いを伺いました。
施設外就労を始める前に考えたことはどんなことがありますか
平成21年11月頃より、めのやから天然石の選別、袋詰めの作業やネックレスのチェーン通し、ラッピングなどを請け負い、少しづつ仕事量も増えてきました。
同じ仕事をセンターはばたきから会社のほうへ出向いて行うことはできないものかと考え、利用者の中からメンバーを絞り、めのやの作業に携わる機会を増やしました。
メンバーのほとんどが実習経験がなく、会社へ行くことに対して緊張や抵抗を感じる事が予想されました。そこで事前に納品時に同行し会社へ行くことへの抵抗を減らすことや、日程表を作成し職員や家族(グループホーム世話人を含めて)から、後押しをし、本人の意欲向上に努めました。
11月、12月と三週間にわたり、実習を実施し施設外就労へ向けての課題等を検討する期間としました。
スタートしてからの現場の様子を教えてください。
実際始まってからは、メンバーから「落ち着いて作業ができる」「静かでよい」などの声が多く聞かれ、静かでよい環境の中で仕事をさせてもらうことで能率もアップしたようです。
作業については、流れ作業とし個々の得意な箇所を担当して最後に職員が検品をし、利用者1名と納品に行くようにしています。納品に一緒に行くことで会社の方に利用者の顔や個性についても知ってもらう機会を増やしています。
同じ作業が続くと、集中力が途切れたり中には負担に感じる利用者もいるため、作業種目を2種類以上いただいておくようにし、納期に間に合うよう職員で段取りを組むようにしています。
一日の作業終了後に終礼をし、その日の振り返りを行っています。そこで出た意見や反省をもとに翌日の作業の段取りを考えるようにしています。
今後の予定についてお教えください。
メンバーの中からリーダー的な役割を担える人材を育成し、中心となって作業をすすめることができるようになるようにしていきたいと考えています。短時間からでも、社員さんの中へ入り作業をする時間を設けたいです。
最終目標はやっぱり就労!!です
めのや様、利用者の方へのメッセージをお願いします。
【めのや様へ】
担当の課長さんをはじめ、社員の方々にセンターはばたきの利用者について理解をしていただき、働きやすい環境づくりや仕事内容について配慮していただき感謝しています。利用者の皆さんが気持ちよく通って来られるのも、こうした会社側の十分な理解があるからだと思います。
【利用者の方へ】
現在、月曜日から木曜日を「めのや」訪問しての作業としており、その会社での活動を利用者はとても楽しみにして出勤して来られます。会社では事業所以上の集中力もみられて、作業効率も良くなってきています。
また、「めのや」受託作業は引き続き事業所内でも行っていますので、会社へ利用者が出かけて作業をすることが事業所に残って作業する利用者へのあこがれに映り、“いつか自分もきちんと作業ができるようになって「めのや」の会社へ行きたい”という目標に繋がっています。
インタビュー3「センターはばたき」利用者
現在、めのや様で作業を行っている利用者のみなさんは、どんな思いで取り組んでおられるのでしょうか?お忙しい作業の合間に、感想などをちょっと訊いてみました。
めのやで作業をする前はどんな気持ちでしたか?
結構、緊張しました。(利用者Hさん)
先輩がめのやさんで働いていたので、ここへ来るのは楽しみでした。(利用者Tさん)
ここで作業をはじめたときはどうでしたか?
ここでやれるのかなと少し不安でした。でも、はばたきで作業するより静かに出来て働きやすいです。(利用者Hさん)
グループホームに住んでいるのですが、そこの世話人の方に励ましてもらって来られるようになりました。(利用者Uさん)
今の仕事をしていて楽しいこと、困ったことなど教えてください。
計量する作業を好きで、ここでも同じようにできるので楽しいです。(利用者Tさん)
はばたきでやるより、ここでの作業の方が楽しいです。(利用者Sさん)
苦手な仕事だとつらいけど、自分にあった袋詰めの仕事だと楽しくできます。(利用者Uさん)
急ぎの仕事を頼まれたときは、少し困ったことがありました。でもやり終えるとホッとしました。(利用者Hさん)
これからの目標、目指すことを教えてください。
これからもここでの作業を続けていければと思います。(利用者Hさん)
ここでの作業が好きなので続けてきたいです。(利用者Tさん)
「めのや」様へ何かメッセージがありますか。
これからも先輩に会う機会を作ってもらいたいです。(利用者Tさん)
最後に一言、どうぞ!!
めのやでの作業は楽しいよ!(利用者全員)
インタビュー4「株式会社めのや」関係者
施設外就労の取り組みを受入されている「株式会社めのや」の関係者の方に、企業の立場から今回の取り組みについて考えたことや、思い、さらに今後の展望などについて伺いました。
御社として受け入れるに至った動機や背景について教えてください。
平成19年に行政から従業員200名以上の会社は1.8%の障がい者を雇用しなければいけないという指導を受けました。当時は、6名雇用する必要があるところ2名しか雇用していない状態でした。そこから毎年障がい者の方を新卒も含めて雇用しています。去年の段階で身体障がい者の方が3名、知的障がい者の方が2名、精神障がい者の方が1名という状況です。現在従業員数が650名ですから、12名の障がい者の雇用が必要ですが、カウント数としては9名なのでまだ3名分ほど足りていません。今後従業員も毎年50人から100人ずつ増えていく状況なので、それに合わせて障がい者の方も雇用していかなければいけないという背景があります。
そんな中でセンターはばたきさんの方から会社の中で職場体験を行いたいという話を伺いまして、当社としても前向きに取り組んでいこうということで現在に至っております。(遠藤様)
「センターはばたき様」との出会いを教えてください。
当社は、おかげさまで「天然石」、「出雲型勾玉」などがキーワードの商品販売が全国的に拡大しております。そのため商品の調達から準備・出荷までの工程が非常に多忙になりました。そんなときに社内で「どこかで手を借りれるところはないだろうかね」と話をしていたところ、従業員の中に「センターはばたき」様の職員の方とご家族の者がおりまして、「それなら話をしてみます」というのが出会いのきっかけでした。実はこうした何気ない会話から人と人との繋がりで始まったということなのです。
最初は、はばたき様も「是非見学をさせてください。」「こういう仕事なら出来るかもしれない」ということで、最初は水晶チップの袋詰めといった作業から始めました。この商品は当社で年間を通じて売れている商品なので、継続的に安定的に作業をしていただけるものでした。この点ははばたき様にとっても安定して仕事があるという点がありがたいとおっしゃっていただきました。
結果として、納品いただいた商品の品質が非常に良く、丁寧に仕事をしていただけるので、それなら継続的にお願いしようということではばたき様とのお付き合いが始まりました。(稲毛様)
受入について期待や不安、配慮されたことについて教えてください。
まず、納期や商品数量、品質基準に見合った商品を納品していただけるのか、そして安定的に供給してもらえるのかどうかということの不安と期待の両方がありました。
ただ、何かあればお互いに話し合いが出来る関係もできていましたから、受入する上では不安よりは期待の方が大きかったです。(稲毛様)
受入してみての率直な感想をお聞かせください。
受入までは、はばたき様の事業所に材料を持ち帰って作業を行っていただいていました。閑散期はそれでよかったのですが、当社とはばたき様との距離が、繁忙になるに従ってロスになるということ、また作業内容の説明や指示をする際に微妙なニュアンスが電話などでは伝わりづらいと言う面も出てきました。
その点では、受入後は、横と横との繋がりというか非常にコミュニケーションもスムーズになり、また商品の仕上がり状態も更に良くなってきました。近くで作業をしてもらえることから、安定的な仕事の他にスポットの仕事や急ぎの仕事など色々な作業をお願いする機会も増えました。もちろんお願いする際には事前にはばたき様に相談して、得手不得手も考慮しつつ進めています。全体を通して、当社にとって受入は非常に有難いことだと思っています。(稲毛様)
これから期待すること、取り組むべき課題、目標などは何ですか。
当社としてやはり障がい者の雇用ということがまず取り組むべき課題です。はばたき様の場合は、当社の中で作業をいただいていますが、雇用ではないので法定雇用率のカウントにはなりません。雇用となると、監督者の配置やその人への負担の増加、また社内の周りの人への理解を深めていくということも考える必要があります。当社でもまだ全社を挙げて障がい者の受入をしていこうというところまでには至っていない状態です。
また、中小企業ですので現在の経済状況から一般の雇用でも慎重にならざるをえない状況の中で障がい者を雇用するということは正直難しい面があります。
ただ、はばたき様との取り組みを通じて、障がい者の働きが会社にとってプラスになるということは実績として見えてきておりますので、障がい者が働きやすい環境や施設面などでバリアフリー化から初めて、将来は地域の中で「障がい者も雇用している会社」として少しでも地域社会に貢献できればと考えております。
今回のはばたき様の取り組みのような職場を体験してもらう中から雇用に繋がっていけば、良い事例になるのではないかと期待しています。(遠藤様)
これから障がい者の受け入れを検討される企業へメッセージをお願いしいます。
当社は小売業ですので、障がい者の方に店舗での販売をしていただくということは難しい面もあり、本部での仕事の中で何をしてもらうかということを悩みました。最初はやってもらう仕事がないのではないかという話もあり雇用していなかったのですが、実際は、簡単な軽作業ではなく、色々な部署で一般の方と一緒に活躍をしてもらっています。それぞれ得手不得手はあると思いますが、その人に合った仕事というのはどの会社でも探せばあると思いますので、そうした仕事を探しながら雇用に繋げていっていただければと思います。(遠藤様)
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