インタビュー1 ワークくわの木 施設長
ワークくわの木江津事業所でおいもの学校プロジェクトをやるというお話をどう思われましたか。
ワークくわの木江津事業所の前身は、杉の子作業所といって市の委託事業でしたが、それでいわみ福祉会のほうで江津にもそういう柱になる事業所が必要だという機運が高まり「江津にも福祉事業所を立ち上げましょう」ということで、ワークくわの木江津事業所が開所しました。それで、事業の内容については江津事業所のメンバーで、ここで何をするかということでいろいろ考えました。
おいもの学校プロジェクトについても「おいもの学校をしなさい」とか「サツマイモを栽培しなさい」ということがあって始めたのではなく、農業という分野は、非常に利用者さんが働く機会や場面をたくさん提供できるという思いがありました。しかし、農業で利益を上げるということは非常に難しいことでしたが、一般の人も食べること、安全性や地域の中で地産地消をすることは重要であるという意識が高まった時期であったので、農業は絶対にやっていこうという思いがすごくありました。
しかし、実際に農業をやっていくにも、利益が上がらないことには、利用者さんの工賃も多く支給できないので、そこをどうするかということが課題でした。農業で収益を上げるためには生産した野菜をどう卸していくかということが重要で、いわみ福祉会は施設が多いので、そこに生産した野菜を卸すという方法で消費はある程度確保できるという見通しを立てました。
農業という分野ですが、農業に対する不安などはなかったのですか。
実際に一般のプロの農家さんでも、例えば野菜を作って出荷する場合は、大体売上げの3割ぐらいが収益になれば非常に上出来だと思います。しかし、いわみ福祉会だけに野菜を卸していてもわずかな収入にしかならないし、もちろん私たちは農業のプロではないので、3割収益を出せる品質の野菜を作るといのは難しいことなのです。そこで、収益を上げるための手段として、生産体制を6次化して自分のところで全て商品作りを行っていこうと考えました。つまり、野菜の加工まで自分のところで行えれば、全体の6割から、7割の利益が確保できるということで、それに取り組んでみようと思いました。
それと、もう一つは石見地方には福祉事業所が点々とある中で、やはり、一般の企業や、お菓子屋さんに対抗していくためにも専門性と呼ばれる技術がどうしても低いということが課題でした。その専門性をカバーするために、たくさんの注文された量を受け入れる態勢を作っていく必要がありました。そうすると、ワークくわの木が一事業所だけで頑張ってもなかなか難しいのです。大きな市場を開拓していくためには、複数事業所が連携してやっていくことが重要なポイントでもありました。
そこで、まず、連携ができ易いものとは何かと考えたときにサツマイモが真っ先に浮かんできました。昔から石見地方では、幼稚園や小学校でも盛んに行われてきました。つまり、小さいころからサツマイモの栽培経験をしている子どもたち多く、全くわからない言う人はいないという利点がありました。ですから、他の事業所でも、サツマイモの栽培から加工まで、商品ができ上がるまでの過程の中で、どこかに関わりをもっていただけるのではないかと思いました。それがサツマイモに目を向けた最大の理由なのです。
サツマイモは商品開発しやすくて、生産しやすいということで、今回のおいもの学校という商品を作るという流れになったのでしょうか。
サツマイモは商品開発しやすいということではありませんけども、生産がしやすいということは言えると思います。サツマイモは根菜類ですので、そんなに、毎日管理をしなくても良いので、だから葉物の野菜を作りながら、合間にサツマイモの管理をしていくということができました。
実は、農作業で一番大変なのは、ワークくわの木江津事業所にはビニールハウスが全く無い状況なので、冬場の仕事をどう確保するかというが結構大変なのです。サツマイモは秋に収穫をするので冬場に加工があるからと思い取り組みましたが、実際はなかなか商品開発というのは、そんなに甘いものではないなということをつくづく感じました。
その加工する商品として、サツマイモを加工した干しいも作りを始めました。干しいもは、そもそも一般の農家でもやっていましたし、私たち自身も、昔は干しいも作りを経験していますから、品質の良し悪しは別にしても、見よう見まねである程度の干しいもができるのではないかという思いはありました。
サツマイモ栽培等農作業というのは、天候に左右される大変な作業なのですけど、利用者さんが、それにどう取り組んでこられたのか教えて下さい。
農作業で何が大変なのかというのは非常に判断しづらいところです。苗の植え付けや畑の準備に関しては、実際に植え付けをして、間では草取りと水やりも利用者さんにやってもらっています。ですが、サツマイモは葉物野菜のように頻繁に手入れをしなければいけないといことはありません。やはり、夏の一番暑い時期に畑の草取りなどをやってもらうわけですから、そういった暑さ対策という面が一番大変だと思います。とは言っても農作業というのは基本的には外でする仕事ですから、他の野菜に比べてサツマイモが特に厳しいっていうことはないです。この厳しい暑さで仕事をすることに対する喜びや苦労は、どんな仕事でも同じなので、農業が大変であるということはありません。
やはり、サツマイモ栽培や加工というのは、連携が取りやすい性質があるのでしょうか。
この農園芸の分野は、お互いに連携しやすいと思います。福祉は、やはりスポット的に高まるということはあり得ないと思います。やはり、その地域全体が福祉に対してレベルアップを考えていかないといけません。例えば、ワークくわの木江津事業所だけが、技術的に飛びぬけていて、利用者さんの福祉活動がすごくて、その周りの地域の福祉が、すごく貧困な状態というのはあり得ないと思います。
それは、利用者さんにとって、事業所での活動以外に、日常生活が半分あるわけですから、一歩事業所の外に出た場合、生活を含めた全体のレベルが低ければ、福祉活動もレベルが低くなるので、エリア全体の福祉レベルを上げていくこと重要だと思います。そしてワークくわの木江津事業所だけ福祉レベルが高まっても、そんなに社会全体の福祉レベルが高まったということには繋がらないので、その連携を横に広げていきやすい仕組みが必要ではないかと思います。でも、それってすごく難しいですよね。。
同じ法人でも、いろいろな障がいを持っている人が事業所に来ておられますし、同じ障がいの人が集まっている事業所もありますけれども、そこですら繋がりがなかなか連携を取りにくいが現状です。
そこで、サツマイモの加工であれば、商品がどんどん出るような仕組みを考えれば、他の事業所にも、いろいろな仕事をお願いできますし、あるいは生活介護レベルの重い人でも畑に出て芋を掘るといったことに関わっていけるわけで、非常に良い仕組みを生み出すことができると思います。
そもそも江津市の海岸部は、昔からサツマイモの栽培というのは盛んでしたが、今はもう荒地が非常に増えているから、そういうような荒地を利用してサツマイモ栽培をするということに意義があり、サツマイモの栽培・加工は、連携を広げるためにも重要な活動でもあると、私自身が思っております。
それぞれの福祉事業所が工賃をアップさせるためには、どのような仕組みや連携が必要でしょうか。
そういう仕組みを作りたいが、なかなか思うようにはいかないものです。そして、一つの事業所が、ずっと作業所時代から積み上げてきているものには限界があります。
例えば、島根県東部で連携し、勾玉やお守りを作った場合に、最初は目玉商品として、一時的には伸びるけども、いつまでも売れ続けることはありません。やはり、食べるものというのは消費が早いです。置物や焼き物など、そういう商品だと一回買うと、次の商品を買うまでの期間が長いですよね。そうすると、食べるものというのが一番確実に仕事も生まれてきます。これまで一つの福祉事業所で、10以上も取り組んできたところでも、工賃倍増計画を立てても飛躍的に工賃が上がったというところは、あまりありません。結局伸びない理由というのが、消費がある程度のところで頭打ちになっているという状況があるのです。とは言っても、全国をターゲットにインターネットで大量に通販すればどうかというと、一つの事業所で製品を準備できる数量は限られていますので、とても、全国あるいは全県の中で扱えるだけの商品を一つの事業所で作ることは不可能なのです。そうしたら、どうしても複数の福祉事業所が連携し、大量生産できる仕組みを作ることが必要になってきます。福祉事業所も一般の企業と張り合うためには数量で勝負するしかないです。人員も含めて、そうやっていくことで広がりがある程度確保できるのかなと思うのです。その中で、ある程度「おいもの学校」の製品というものが知れ渡ってきて、商品がどんどん出ていくような仕組みをつくれば、一つの福祉事業所だけで全て商品まで完成しなくても、例えばサツマイモを栽培するところだけあっても良いし、苗を仕立てるところがあっても良いと思います。ですから、作業をある程度分散させて、お宅の事業所では苗を仕立ててください、うちの事業所がその苗を使いますというようなかたちができ上がり、苗だけを仕立てた事業所だけでも収入が格段に上がってくる。そして、ある程度の規模でサツマイモを栽培し、それをまとめて収穫し、袋詰めをする。それを近くのスーパーに販売する。販売仕切れなかったサツマイモを加工のほうに回すから、生産ロスが少ないのでまとまった量のサツマイモを栽培することができるのです。そうやって、事業所どうしが繋がっていく、一つのモデルケースとしても非常に意味がある取り組みだと思います。
このプロジェクトの最終の目的はどういったものでしょうか。
今、石見の福祉事業所の就労継続支援B型の平均工賃が3万円に届かないと思います。それを5万円にするのは至難の業です。だから、就労継続支援B型で考えていけば、繋がりを横へ広げていって、複数の事業所の工賃を3万円程度までにしていくことが重要なのです。不可能なことではないと思います。今のように一つの福祉事業所だけが一生懸命頑張っても、工賃3万円にするには、中核となる商品を作り上げていかなければ、到達することはできません。このプロジェクトに石見地方の多くの福祉事業所が、ぜひ参加して連携の輪を広げていってもらえればと思っております。
インタビュー2 おいもの学校 担当者
農業部門を始められた理由を教えて下さい。
森のレストランが一つの卸し先になるのですが、森のレストランだけではなくて、いわみ福祉会の中に老人ホームなどの福祉施設が複数ありますので、そこに向けてターゲットを絞ることで、販路を開拓していこうという取り組みから始まりました。
実際に農業をされる方が一番困っていることは、野菜を作っても売るところがありません。いわみ福祉会は、老人ホームが50床、デイサービスが35床の配食サービスなどを行っております。実は近くに「ミレ青山」という施設があるのですが、もともと私と施設長は、そこで働いていたので、そこをターゲットに野菜を作り、卸ろすことで、一ヶ月で何十万になるのではないかというプランでした。でも、実際にはそんなに簡単ではなかったのですけれど。
それでも販路はあるが、一次産業なので厳しいということは分かっていましたが、農業をやりたいと思う利用者さんもいたので、販売するルートもあるから「やってみようか」と思いから農業を始めました。その中で森のレストランも、卸し先の一つになったというところです。森のレストランのためだけに農業を始めたわけではなく、いわみ福祉会の施設に作った野菜を卸せるという目的で農業部門がスタートしました。
最初から、サツマイモを使った商品を開発しようというお考えだったのですか。
もともと干しいもづくりは、島根県障がい者就労事業振興センターと話す前から、江津事業所を建てる前からやりたいという思いがあったが、ワークくわの木だけでは販売ルートもないし、その食品開発能力もないというところで、島根県障がい者就労事業振興センターと一緒にできないかということ、去年の12月ぐらいに話をして、そこからこのプロジェクトが始まりました。
商品が完成するまでに一番大変だったことは何でしょうか。
全てが大変でした。何も0からの出発なので、何も知らなかったです。例えば「干しいも」をどうやって作るのか、というところから最初は入り、いろいろとインターネットで調べたり、本で調べたり、それでもわからないことは島根県の産業技術センターに行って聞いたりしました。また、他で作った「干しいも」を買ってみたりもしました。そんなことをしながら、毎日新しい発見や気づきの連続でした。それでも、「お菓子を作れ」と言われるより、そちらの方が全然やりやすかったです。お菓子作りのようなテクニックはいらないので、実験みたいな感じで、最初は取り組みました。
ですが、例えば「カルビーのポテトチップスを作れ」と言われても絶対に作れないですが、「干しいも」を作る場合は、一般的に世の中の人は、手作りでやっておられるので、味に関しては似たものができるのではないかという気がしておりました。試行錯誤しながら、蒸す時間など、ある程度工程が決まっているのでポイントを押さえれば、なんと見よう見まねでできるかもしれない気持ちで取り組みました。
サツマイモの品種はどういったものを作っておられるのですか。
ワークくわの木江津事業所で作っているサツマイモは、紅あずまと玉豊という品種を作っております。干しいも用として、茨城県のほうで90%以上使用されているのが玉豊という品種なのですが、この辺では玉豊を作っているところはほとんどないと思います。その他にも、少しだけ安納芋やほしキラリという品種をも作っております。
このおいもの学校という商品は、ワークくわの木さん以外の他の事業所さんも製造されているのですか。
こ緑風園さんでは、もとも干しいもづくりをやっていたが、去年は上手くいかなくて、今年はサツマイモの品種を変えて今年はやられると思うのですが、島根県障がい者就労事業振興センターができあがった商品を見て、これなら「おいもの学校」ブランドとして出荷しても良いというお墨付きをもらえないと販売できません。ですから、それぞれの事業所が勝手に「おいもの学校」という名前だけを使って出荷したら、ブランドの評価が下がっていきます。商品の価値が下がるのは困るので、島根県障がい者就労事業振興センターが承認した商品のみを店頭に販売できるという規約を結んで、各事業所が商品づくりを行っているのです。緑風園さんは、今年も干しいもづくりをされるという話を聞いています。
ワークくわの木さんで、去年成功したノウハウとかというのを他の事業所さんと共有されるのでしょうか。
去年、緑風園さんは干しいもが上手くいかなかったので、お互いに繋がりをもって緑風園さんに成功したノウハウを隠さずにお話します。実際に見学にも来ていただいたりして、利用者さんが作っている現場も見ていただいているので、お互いに連携や共同をしていくつもりで考えております。ですから手のうちを見せないといことは一切ないです。
おいもの学校の製造をしていくことで、利用者さんに変化はありましたか。
この商品づくりをやればやるほど良くなるし、個人の責任感も出ています。商品を作り、それが実際にお店に並ぶということは、やはり利用者さんの喜びに変わると思います。ですから、皆さん作業に集中し、熱心に責任感を持ってやってくれるというのが、私から見てもすごいなと思います。ここの作業で言うと野菜を作ったりするよりも、きちんとした商品になるほうが、やはり目で見て喜びを実感できます。
そして、最後にパッケージに入れて商品が完成し、シールを貼ったりする作業はまさに商品づくりの醍醐味を感じるので嬉しいじゃないですか。また、お客様の見えるかたちで納品に行くと、その流通過程を通して、商品をつくる過程において利用者さんがそれぞれ関わりながら商品を作っていることを実感し、その満足感が喜びになり、自信に繋がるということを実感しました。
できあがった商品は、どのようなところで販売しているのですか。
おいもの学校という商品以外でも、あとは代官いもという大きい山芋を2種類作っております。おいもの学校には干しいものパッケージと、冷凍焼き芋のパッケージがあります。あくまでお土産ということで、干しいもはパッケージがきちんとしておりますので、それなりの値段で販売しております。
また安い価格でスーパーに卸す場合は、違うパッケージにして販売をしております。卸先は、サンピコごうつさん、アクアスさん、一番街さんの3店舗に卸しました。その他に、普通の干しいもは近所にあるキヌヤさんというお店に卸しました。冷凍焼き芋のほうはアクアスさんやサンピコごうつさんと、ぢげもんの松江店さんに、それからあとは、ワークくわの木のワークショップで販売しておりました。商品として干しいものほうがたくさん売れましたね。
石見地方、特に江津市にはあまり有名な土産がないので、土産が売れるシーズンに商品を並べさせていただくと、思った以上にたくさんの商品が売れました。ですから、準備が足りなかったので、今年は準備しておけば、もっとたくさん売れると思います。今シーズンは商品ができ上がったら直ぐに置こうと計画をしております。
今後おいもの学校という商品を製造・販売していく上で課題があれば教えて下さい。
まだまだ、作業能力的に見ても足りないだろうなと思っております。やはり需要があるものを作っていかなければいけません。サツマイモについてかなり需要があるみたいなので、まだまだ生産体制を整えていかなければいけないと思います。
そして、これまでの福祉を前面にだしたやり方でなく、両方うまく使っていこうと考えております。ですから甘えられる部分は福祉での補助金をいただいたり、手助けしてもらう部分が必要だと思います。
福祉の事業所で作った製品であるということを前面に押し出した売り方をしても絶対に売り上げは伸びてこないと思うので、そういったところを出さずに一つのブランド商品として、生産及び販売を行っていきたいと思っております。
おいもの学校プロジェクト以外にも新しい展開はお考えでしょうか。
例えば、おいもの学校というブランドで、パンを作ったり、クッキーを作っても良いと思います。ワークくわの木のように干しいもを作らなくても、こちらでサツマイモのペーストやパウダーを作ったりしたものを加工して、新しい商品を作ってもらえれば良いと思います。そういった繋がりで協力していけば、また全然違う新しい展開が生まれてきます。そうすれば連携というのは無限にあると思います。ですから、「こういうものを作りたい」という提案が数多く出てくれば、もっと面白い展開になると思います。
今後、このプロジェクトに取り組まれる事業所さんが増えてくると思うのですが、何かワークくわの木の益田さんからアドバイスがあればお願いします。
また、一年目なのでアドバイスできる立場ではないですが、これまでのようにそれぞれの事業所が違うことをやっていてものづくりの未来は変われないので、一緒になって連携できれば、大きな仕組みできるし、色々なアイディアも生まれるので、ぜひ協力し合いながら頑張っていきましょう。そうすれば、それぞれが関わる人は少ないと思うのですけれど、それが例えば5個の事業所が頑張って動ければ、それに繋がる人も多くなってくる。よりサポート体制も強化できれば大きな柱ができあがってくるのです。
インタビュー3 ワークくわの木 農業担当
おいもの学校プロジェクトでは、どういった仕事をしておられますか。
農業部門では何でもやりますよ。
干しいもの工程は、まずサツマイモを洗って、それを蒸し器に入れます。蒸し器に入れて、時間を掛けてある程度の温度で蒸します。その後、熱いうちに皮をむいてやって、保熱して、サツマイモを切って、それを干すというのが一連の作業になります。おいもの学校プロジェクトでは、去年は、干しいもを作る工程ではサツマイモを洗ったり、蒸したサツマイモの皮むき作業を行いました。干しいもができ上がる全ての工程で仕事を行っています。
私自身があまり作業をせずに、利用者さんに作業をやってもらいます。最初だけお手本を見せて、利用者さんに指示を出して、作業をお願いします。それ以外に蒸し器のスイッチの押し間違えなどの確認をします。
利用者さんと一緒に畑仕事もやられるのですか。
やっております。どちらかと言うと畑での仕事が多いですね。夏場はサツマイモの加工の作業がないので、夏場はずっと暑い外で仕事をしています。10月を過ぎるとサツマイモの季節になるので、サツマイモの収穫をしています。サツマイモは直ぐには熟成しないので、2ヵ月半ぐらい寝かせてから、サツマイモが熟成してから加工をします。冬場は干しいもづくりをやったりするのだけれども、それ以外の時期は畑でいろんな野菜を作ったり、草を抜いたりということを仕事の主にしております。
今年は、暑い日が続いたのですけど、サツマイモのできはどうでしたか。
去年、一昨年のサツマイモは、虫が食ったようなサツマイモが多かったが今年のサツマイモは、小さいが虫食い状態のものがあまりなかった。しかし、今年の夏は本当に暑くて大変だった。暑いより、どちらというと少し涼しいほうが、サツマイモのできは良いと思います。サツマイモというのは、もともと休耕対策ということで広がったものなので、どこでもできるというふうに言われていたのですけれど、暑すぎてもいけないみたいです。だからある程度、水やりも考えてやらないといけないことが、この1、2年で分かりました。ほったらかしでは、良いサツマイモはできないです。
サツマイモ加工をうまく行うコツがあれば教えて下さい。
難しい質問です。皮むきを蒸し器で行うと1サイクル、2サイクルというのが作業単位ですので、それで干し場も限られているので、1サイクルで作業も終わっています。皮をむくだけというのが、この仕事ではないので、いろいろな工程で複数の作業があります。皮をむいた後に切り、切ったものを並べるということなので、何個むけるかといったら、それは限りなくむけると思います。大体1時間で20個くらいはむけると思います。自分がこれまでの農業の経験で蓄積した知識で農業部門の人を助けていきたいと思います。
インタビュー4 振興センター 事業担当
おいもの学校プロジェクトの中で、島根県障がい者就労事業振興センターの役割を教えて下さい。
私は、西部の多くの福祉事業所に、おいもの学校をプロジェクトに参加してもらいたいという思いがあり、おいもの学校プロジェクトをより普及をしていくために、協力をしていただける福祉事業所を見つけて連携を取っております。
現在は、おいもの学校プロジェクトは、江津市では主にワークくわの木江津事業所さんがやっていますので、一緒になってそのプロジェクトを普及させるためには、モデルとなる事例を作れば、自分たちもやりたいと思う福祉事業所も増えてくるのでないかと考えております。いきなりやろうと言っても形が見えないものは難しいと誰もが思いますし、言葉だけで理想を言ってもなかなか実際の行動には移ってこないと思います。今は成功事例をたくさん作って、それを実際に見せてあげて、一緒にやっていこうという福祉事業所がどんどん増えてくることを期待しております。
おいもの学校というプロジェクトをワークくわの木江津事業所と協力することなったきっかけを教えて下さい。
島根県障がい者就労事業振興センターの西部事務所をいわみ福祉会の中においておりまして、いわみ福祉会とサツマイモの商品開発の協力をしていこうという思いがあり、一緒に協力をして商品の開発や販売を行っていこうという話になりました。
ワークくわの木江津事務所からすると、サツマイモの製品を広げていけるというメリットがあり、島根県障がい者就労事業振興センターからしてみると事業所間の連携ができるという、両方のメリットがあって、win-winの関係でお互いにやっております。
実際に1年間やってこられて、思惑通りに事業が進んだのでしょうか。
いいえ、もっと実際はすごく苦戦するのではないかと思っておりました。実際に振り返ってみれば、結構いろいろな人と話ができて、いろいろな場所と繋がることができたのです。ですが、当初想定していた以上に順調にプロジェクトが進んでいると思います。幾つかまだ課題はありますが、ここまでとんとん拍子に進むとは思っておりませんでした。
一つひとつ課題をクリアするために、いろいろな人と協力してやっていく過程で、いろいろな人と出会い、そしていろいろな繋がりができたことが、本当に一番大きかったと思います。やはり、何をするためにも人脈が大事で、人から聞いた話で、アドバイスやヒントを導き出し、また違う人を紹介していただき、本当にたくさんの人に出会いました。結局、それが全て繋がって、このプロジェクトができ上がっているのだと自分自身が強く感じました。
それで、実際、自分たちが何をしたかというと、歩いていろいろな人に会って、その人と繋がって、人間関係を築いていった、ただそれだけなのです。
ですから、私たちだけで考えてやろうとしても絶対無理なので、いろいろな人がアイディア出し、専門の分野は、それが得意な分野の方にお任せするといったことが重要だと思います。
おいもの学校が成功している最大のポイントは何ですか。
ただそこでじっとしていても話が前に進まないので、実際にいろいろな人に会いに行き、その人に、また違う人を紹介をしてもらい、またその人に会いに行きました。だから、とにかく閉じこもっていてもダメで、とにかくどんどん人に会って話をして、人となりを見てもらって信用していただいてということで、このプロジェクトが大きくなっていきました。
本当にたくさんの人からいろいろな話を頂いており、それは全部繋がりの中で生まれたもので、これを全て具体化できたら良いなということがいっぱいあります。ですから、それをかたちとして確立でできれば、もっと多くの福祉事業所の方が連携できるプロジェクトになると思います。
商品の販路拡大は、ワークくわの木と振興センターの両方が協力して行っておられるのですか。
そうですね。販路拡大は、今までお互いの繋がりがあるので、そういった繋がりのあるところに声を掛けながら、ワークくわの木さんと振興センターのお互いの人脈を合体させて、情報を共有してきました。そういったところでも、常に足を使って行動し、人に会いに行くというスタイルを貫いて、連携のネットワークを広げていっております。ですから、たくさんの人から情報をいただいたり、また違う分野の人を紹介していただいたりと、そういった出会いの積み重ねが、このプロジェクトのネットワークが広げております。
このプロジェクトのネットワークをフルに販路拡大に生かせれば、商品の数量がどんどん多くでき上がっても、それを販売するところがないということは絶対にないと思います。
おいもの学校プロジェクトどのように拡大していこうとお考えでしょうか。
年の初めなどに、おいもの学校プロジェクトの紹介や共通ブランドでやっていこうという話はいろいろな福祉事業所の方やこのプロジェクトに興味がある方にしております。
やはり、無理やりたくさんの商品を作っても、品質の良い商品はできないと思いますし、クオリティの面でもブランドの価値を下げてしまうことに繋がってくると思います。
今実際に参加してもらっている事業所は4つぐらいあるので、そこで皆が、おいもの学校というブランドを高めていきたいという思いがあり、ブランドの信用を下げないために品質の良い商品を生産しております。ですから、そういった熱意がある福祉事業所にはどんどん参加してもらいたいと思っておりますし、それが、利用者さんの工賃アップに必ず繋がっていきます。
あとは福祉事業所にも必ず得意、不得意もあると思うので、「うちの事業所は細かなことが得意であるので商品加工をやりたい」または「うち事業所は農業が得意なので、サツマイモの栽培を頑張ろう」そういった覚悟で商品を生産する意欲の高い事業所とは、一緒に頑張って連携をしていきたいと思っております。そういった福祉事業所に島根県障がい者就労事業振興センターとしても厚くサポートしていければと考えております。
おいもの学校という商品に限らず、本当にサツマイモというキーワードにいろいろな繋がりが広がっていくということも狙いとしてあるのでしょうか。
よく言えばそうなのですが、おいもの学校という商品ブラントを通して、いろいろな繋がりやネットワークができ上がり、関わっている人や事業所にメリットがあるのがベストだと思います。ですから、お互いがwin-winの関係で、全ての人や事業所が勝ち、どこかが損しても面白くないので、皆が笑顔で誇れるプロジェクトにしていきたいと思います。そして、最終的には、福祉事業所の利用者さんの生活の質の向上のために工賃アップができれば、それがこのプロジェクトの究極のかたちだと思います。
ギャラリー
事業所および企業紹介
事業所
■法人名:社会福祉法人 いわみ福祉会
■事業所名:障害者福祉施設多機能事業所ワークくわの木江津事業所(生活介護支援事業・就労継続支援B型事業)
■開所:平成23年4月1日
■所在地:島根県江津市江津町1110-20
■TEL:(0855)52-2806
■FAX:(0855)52-2807
■ホームページ:いわみ福祉会
ショップくわの木
ワークくわの木・江津事業所に併設されており、取材致しました「おいもの学校」などのいわみ福祉会で生産している製品などを販売しております。
■所在地:島根県江津市江津町1110-20
■TEL:(0855)52-2822
森のレストラン
ワークくわの木・江津事業所に併設されており、様々な樹木が集う、心地よい森をコンセプトにした本格イタリアンレストランです。
■所在地:島根県江津市江津町1110-20
■TEL:(0855)52-2822
■営業時間:11:00~17:00(金曜日を除く平日)
11:00~20:00(金、土、日)